「歩いていると股関節が痛くなる…」と悩んでいませんか?
長く続く股関節の痛みには原因となる疾患が隠れているケースがあります。見逃したまま生活を続けていると、徐々に痛みが強くなり、歩行や日常生活に大きな支障をきたしてしまうかもしれません。
そこで今回は、股関節の痛みの原因となる5つの疾患と初期症状、注意点について解説します。
痛みを軽減する方法もご紹介しますので、股関節の痛みを解消して、健康的に過ごしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
股関節の痛みはなぜ起こるのか?原因となる代表的な5つの疾患を解説
股関節の痛みは、股関節を構成する骨や軟骨の不具合や減少、変形などによって生じます。加齢による変形で生じる場合が多い一方で、先天性の疾患や骨折によっても引き起こされる場合もあります。
痛みが徐々に悪化するケースも多いため、痛みが気になり始めた早期のタイミングで治療を開始するのがおすすめです。
以下では、股関節の痛みの原因となる代表的な疾患を5つご紹介します。
- 変形性股関節症
- 慢性関節リウマチ
- 大腿骨頭壊死症
- 先天性股関節脱臼
- 大腿骨頸部骨折
どれも股関節痛の原因になる疾患で、発生原因はそれぞれ違うため、自身に当てはまるものはないか確認してみましょう。
1.変形性股関節症
変形性股関節症は、股関節を構成する骨や関節軟骨に不具合が生じ、関節軟骨の減少や骨の変形を来す疾患です。
有病率(ある時点でその病気を持っている人の割合)は男性が1.0〜4.3%、女性が2.0〜7.5%と、女性に多くみられる傾向があります。起こりやすい年齢は40〜50歳と言われており、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)や臼蓋(きゅうがい)形成不全などの後遺症が主な発症原因です。
特に50歳以上の方に症状がみられるようになっています。レントゲンで変形の程度を検査できるため、股関節の痛みがある方は整形外科やクリニックを受診してみましょう。
2.慢性関節リウマチ
慢性関節リウマチは、手や足の関節に腫れやこわばりが生じる疾患です。
日本人の有病率は0.2〜1.0%と言われており、男女比はおおよそ1:3と女性に多くみられる傾向があります。起こりやすい年齢は40〜50歳で、手や足の指のような小さい関節だけでなく、肩や肘、股関節などの大きい関節に変形が生じる点が特徴です。
血液検査で特有の値や炎症反応の値を確認し、症状が6週間以上続いている場合は慢性関節リウマチと診断されるケースが多いです。(ACR/EULAR分類基準の場合)
目に見える症状だけでなく血液検査のデータも診断に必要なため、違和感を感じたら早めに整形外科やクリニックに相談しましょう。
3.大腿骨頭壊死症
大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭の一部に血流が通わなくなり骨組織が死んでしまう疾患です。
日本での有病率は約0.02%と言われており、男女比はおよそ1.2〜2.1:1と男性に多くみられる傾向があります。起こりやすい年齢は30〜59歳で、若年期から壮年期にみられる疾患です。
疾患の特徴として、大腿骨頭に壊死が起こっていても無症状な場合と、壊死部分が潰れて痛みが生じる場合に分けられます。
別の疾患治療でステロイドを投与しているケースや、飲酒・喫煙、膠原病が発症の原因になると言われており、当てはまる方は医師と相談しながら治療を進めましょう。
4.幼少期に先天性股関節脱臼があった
先天性股関節脱臼は、出生時に股関節の脱臼が見られる状態を指します。有病率の男女比は1:5〜9と女児に多くみられ、お尻や足が先になって生まれてくる「骨盤位分娩」で生じることが多いです。
乳児検診などで発見され、装具治療や手術治療が行われることがあります。
幼少期に手術や装具療法を実施していても、時間とともに痛みが出て、臼蓋形成不全や変形性股関節症の原因となる場合があるため、その際は整形外科やクリニックを受診しましょう。
5大腿骨頸部骨折
本来の「股関節痛」とは異なりますが、大腿骨頸部骨折についてもご紹介いたします。
大腿骨頸部骨折は、転倒や転落などで大腿骨の根本の部分が折れてしまった状態です。
日本での年間発生件数は175,700例(2021年のデータ)であり、男性が37,600例、女性が138,100例と約3.7倍も女性に多くみられます。40歳から年齢とともに増加し、70歳以上になると急激に発症率が高まる点が特徴です。
骨密度の低下による骨粗鬆症で骨折のリスクが高まり、転倒が主な発症原因です。
大腿骨頸部骨折の危険因子 | 親の大腿骨頸部骨折の既往アルツハイマー病、脳卒中甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症心疾患、COPD、糖尿病、腎機能低下膝関節痛視力障害 |
骨粗鬆症予防には、骨密度検査による骨粗鬆症の診断、評価と適切な治療による骨密度管理が大切です。また、治療していても転倒すれば骨折してしまう可能性があるので、できるだけ転倒する危険性を低くするよう、日頃から心がけましょう。
股関節の痛みが原因で起こる初期症状
股関節の痛みが原因で起こる初期症状として、代表的なものは以下の2つです。
- 長時間立ったり歩いたりすると足の付け根が痛くなる
- 足の爪切りや靴下が履きにくくなる
自分に当てはまっていないかどうか、確認してみましょう。
足の爪切りや靴下が履きにくくなる
足の爪切りをする時には、股関節を大きく曲げなければなりません。股関節を曲げるように前傾姿勢を取ると、股関節の変形や炎症が生じている場所にストレスがかかってしまいます。
靴下を脱ぎ履きする際も同様で、股関節の痛みが出始める頃には上記の動作がしにくくなるでしょう。
長時間立ったり歩いたりすると足の付け根が痛くなる
長時間立っていたり歩いていたりすると、股関節に体重がかかり続けます。本来であれば股関節の周りに付いている筋肉が骨を支え、痛みを生じることはほとんどありません。
ただし、加齢とともに筋力は低下し、骨を支える力が衰えます。その結果、変形や炎症が生じている場所に痛みが生じてしまうのです。
股関節の痛みがある場合の注意点や改善の工夫
股関節の痛みがある場合の注意点や改善の工夫は、以下の3つです。
- 体重を増やさないよう管理する
- 和式から洋式の生活に切り替える
- 杖や歩行器を活用する
大切なのは痛みが生じている股関節の負担を減らすことです。
自己管理や環境改善で痛みを軽減できる可能性があるため、チェックしていきましょう。
体重を増やさないよう管理する
股関節は体重を支える体の中心であり、体重増加は股関節に負担をかける要因になります。
体重を増やさないよう管理するために炭水化物や脂質中心の食生活を見直し、食物繊維やビタミンを積極的に摂るように心がけましょう。
具体的には、BMI25未満を目標に体重管理ができると効果的です。BMIの計算式は、体重(kg)/身長(m)2です。例えば身長が170cmの場合は、72.25kgだとBMI25となります。。
なお、過度の減量は筋力の低下につながる恐れがあるため、痩せ過ぎにも注意を払いましょう。
和式から洋式の生活に切り替える
股関節を深く曲げる和式の便器や、布団などで寝起きする和式の生活は、股関節に負担をかけてしまいます。運動になるからと続けていると、股関節の痛みが悪化する可能性があるため、生活に支障が出ている場合は控えるようにしましょう。
洋式のトイレや、ベッドでの寝起きに切り替えることで、股関節の負担を軽減できます。要介護認定を受けている方であればレンタルや住宅改修も可能なため、担当のケアマネジャーなどに相談してみましょう。
杖や歩行器を活用する
補助具を使わない歩行は、股関節の負担を高めてしまいます。股関節に痛みが生じている際には、杖や歩行器を活用し、歩行時股関節にかかる体重を分散し、股関節の負担を軽くするようにしましょう。
杖や歩行器にはさまざまな種類があり、身体の状態に合った適切な物を選ぶ必要があります。専門知識を有している理学・作業療法士や福祉用具の担当者と相談し、自分の身体に合ったものを選ぶようにしましょう。
股関節の痛みの原因を把握し、適切な治療を行おう
今回、股関節の痛みの原因疾患として代表的なものを5つ紹介しましたが、これ以外にも股関節の痛みが生じる可能性はあります。すでに病気を患っている方は、痛みを悪化させないよう治療に専念し、股関節の痛みを感じていない方は予防に努めるようにしましょう。
生活習慣や食事内容など、自分で痛みを助長しないよう気を配れる範囲は多いです。上記で紹介した内容をもとに生活の見直しを試してみてください。
とはいえ、痛みの進行度合いによっては、紹介した工夫で対処できない場合があります。症状が改善しない場合は、専門家の意見を聞き、適切なタイミングで手術を行うことも大切です。手術と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、ご自身の生活状況や希望を含めて、専門家に相談してみるのがおすすめです。
はちや整形外科には2名の股関節担当の医師(非常勤含む)が所属し、人工股関節に対しては68件(2023年1-12月)の手術実績があります。
手術をすることで症状の改善が見込める可能性もありますので、症状が気になる方はぜひ受診してみてください。