私たちの身体のほぼ中心にある「股関節」。
股関節には、人間の上半身を支え、下半身(足)を動かすという重要な役割があります。
変形性股関節症などで股関節を痛めてしまうと、立つことや歩くことに支障が出て、日常生活の質(QOL)の低下につながるため、注意が必要です。
ここでは、股関節の痛みを緩和させる代表的な治療法に関して3つご紹介します。
股関節の痛みを緩和させる代表的な3つの治し方
股関節の痛みをやわらげる代表的な治療法には、
- 手術療法
- 薬物療法
- 運動療法
の3つがあります。
股関節・または足の付け根が痛い、と言っても原因や痛みの強さはさまざまです。股関節自体から起こる痛みではなく、腰の神経の圧迫などにより痛みが出ている場合もあります。
まずは整形外科を受診し、痛みの原因を確認してからご自身にあった治療法を選択するようにしましょう。
1.手術療法
股関節の軟骨が擦り減ることにより、関節の中で炎症を起こします。進行すると股関節を構成する骨盤側(寛骨臼・臼蓋)と太もも側(大腿骨頭)の骨がぶつかり変形していき、左右の脚の長さが異なってくることもあります。
定期的に整形外科を受診し、レントゲン等の画像検査で股関節の状態を確認することが大切です。
人により痛みや生活への不便さの感じ方はさまざまですが、
- 痛みがあって短距離を歩くのもいやになり、外出がおっくうになる
- 靴下をはく動作や仕事・家事でしゃがむ動作がしづらくなる
- 思うように動けなくてストレスを感じる
- 寝ているとき、安静にしているときにも痛みを感じる
などがある場合は手術を検討されてもよいのかもしれません。
このような状態をがまんしていると、身体を動かす機会も少なくなっていくため、筋力も弱っていきます。手術を受けることで痛みがなくなれば、歩行・外出が可能となり、筋力の維持が期待できます。
手術を受けるタイミングについては、医師にご相談ください。
2.薬物療法
股関節の痛みや擦り減りがそれほど強くない場合は、保存治療として痛み止めの薬を使用します。痛みが出るときに内服したり湿布を使用したりして痛みをおさえることで、活動量を減らさない効果があります。
しかし、薬自体に軟骨の擦り減りや股関節の変形を止める効果はありません。また長い期間内服を続けると、胃腸障害・腎機能障害などの副作用を生じることがあります。
医師の指示のもと、内服や湿布の使用を行ってください。
3.運動療法
股関節は身体の中でもさまざまな方向へ動き、身体を支える重要な関節です。
痛みがあることで庇って動いたり、活動量が減ったりすることで筋肉の柔軟性低下、筋力低下が起こりやすくなってしまいます。
痛みが出た時はまずマシンや体重をかけた負荷の強い運動は避けて、なるべく関節に負担をかけないよう、痛みがない範囲で筋肉を鍛えるようにしましょう。
今回、理学療法士が紹介する運動療法は、次のような効果を目的としています。
- 関節に生じる痛みの緩和
- ストレッチによる関節の可動域の改善
- 筋力増強による機能障害の改善
- 関節の安定性の改善
ストレッチや筋力訓練は即時効果よりも、毎日少しずつ行うことで変化が出てくるため、継続して行うようにしましょう。
股関節の痛みに対して行う手術療法を解説
股関節痛に対して行われる手術は複数ありますが、ここでは人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)を中心にご紹介します。
人工股関節置換術(THA)
股関節の傷んでいる臼蓋と骨頭を切除し、チタン合金などでできた人工の関節に置き換える手術です。
人工股関節は主に、臼蓋側に入れるカップ、軟骨の代わりになるライナー、骨頭の代わりになるヘッド、大腿骨に差し込まれるステムというパーツで構成されています。
痛みのある股関節の外側を8~10cmほど切開し、傷んだ部分を切除し、そこにカップ・ライナー・ヘッド・ステムを挿入します。人工関節と骨をくっつけるために骨用のセメントを使用することもあります。
股関節の変形の程度によりますが、手術時間は1時間から1時間半くらいです。手術前後の麻酔などの時間も含めると病室に戻るまでは2~3時間くらいです。
関節の傷んでいる部分を切除し、人工のものと置き替えるため痛みがなくなり、歩行や日常動作がしやすくなります。しかし骨と人工関節が固定するまでに2~3か月かかるので、医師の許可がでるまでは杖を使用する、歩行数を制限するなどして手術した股関節を保護することが必要です。
また、人工物を股関節に入れるため、脱臼する可能性もあります。また、耐久性は以前に比べて伸びてきていますが、20年以上の期間での擦り減りや使い方による早期の破損も起こる可能性があります。手術後は定期的に診察・検査を受けてください。
寛骨臼回転骨切り術(RAO)
寛骨臼回転骨切り術(RAO)は、主に臼蓋形成不全や初期の変形性股関節症に対して行われる手術です。
臼蓋形成不全とは、股関節の屋根にあたる「臼蓋」が通常よりも浅く、大腿骨の付け根である「骨頭」を覆う部分が少ない状態。そのため、通常の股関節よりも荷重が1点にかかってしまい、軟骨が傷みやすくなる病気です。
RAOはまず、太ももの外側を約30cmほど切開します。そして臼蓋側の骨を手術用の特殊なノミなどでくり抜き、骨を引き出し回転させて屋根をつくります。手術時間は3時間程度です。
人工関節置換術とは異なり、自身の骨を切って動かすことによって関節をつくるため、脱臼することはありません。軟骨の損傷が少なく、骨の癒合の早い若い年代の方に適した手術です。
また、切った骨がくっつくのに時間がかかるので、根気よくリハビリを行うことが重要です。
股関節の痛みに効果的なストレッチ・運動
お尻や太ももの前面のストレッチは、関節の可動範囲拡大により股関節周囲の痛みを和らげることに加え、姿勢の改善、歩行のスムーズ性改善に役立ちます。
ストレッチを行う際には勢いは付けずにリラックスして、無理のない範囲で行いましょう。
また、お尻の筋肉や太ももの筋力は、歩行や階段昇降、立ち座り動作など身体を支えるために非常に重要な筋肉です。
鍛えている筋肉を意識しながら、呼吸が止まらない範囲で行いましょう。
ストレッチや運動で痛みが緩和しない場合は手術が適応になる場合もあるため、初期の段階で有効な手段として覚えておきましょう。
※すべてのストレッチ・運動については、痛み・違和感が出た場合には続けず中止してください。
お尻の筋肉のストレッチ
- 仰向けに寝て、お尻の下にテニスボールを置く
- 10秒~20秒くらい、テニスボールに体重をかけるようにする
- 少しずつボールの当たる場所をずらし、同じように10秒~20秒キープ
これを繰り返すことにより、お尻の筋肉が少しずつほぐれていきます。
痛みがなければ、お尻の下でボールを上下・左右に転がしてみましょう。
太ももの内側のストレッチ
- 横向きに寝転がる
- 身体体の上にある足首の上の方を持ち、かかとをお尻に近づける
- 息を吐きながら、足首を持っている方の太もも前面の筋肉が伸びることを確認する
※この際、下の足は少し曲げておくと腰を反らせることなくストレッチが行えます。 - 太もも前面の筋肉が伸びたことを確認したら20秒ほどキープする
- 足首を離してリラックスする
この動作を3~5回、2~3セット繰り返します。
お尻の筋肉の運動
- 仰向きに寝る
- 両ひざを曲げ、手を胸のあたりで組む
- お尻を上に引き上げる
- お尻を引き上げた状態で5秒キープ
- ゆっくりとお尻を床に着ける
お尻を上に引き上げる際には、お尻の穴を閉めるようにして力を入れ、おなかににもしっかりと力を入れます。腰を反らせないようにするのがポイントです。
以上の動作を10回、2~3セット繰り返します。
※ 腰の痛みが強い場合は、この動作は行わないでください。
太ももの筋肉の運動
- 椅子に深く腰掛けて、両手を腰に置く
- 両ひざをつけたまま片脚の膝をゆっくりと伸ばす
※つらい方は両手で椅子の座面を持ってかまいません。 - つま先をまっすぐ上に向けておき、太ももにしっかり力が入っていることを確認し、5秒間キープ
- ゆっくりと膝をもとの位置に戻す
膝を伸ばすときは、太ももが椅子から浮いたり、腰に力が入らないように注意してください
この動作を10回、2~3セット繰り返します。
股関節の痛みの治し方を把握し、適切な治療を行おう
身体を支え、歩行に重要な股関節が痛くなってしまうと日常生活に支障をきたすことがあります。残念ながら一度傷んだ股関節の骨や軟骨は回復することはありません。
痛みをがまんできるからと仕事や家事などに追われていると、適切な治療のタイミングを逃してしまう場合もあります。早めに整形外科を受診することで痛みへの対処方法を知ることができ、股関節の変形の進行を遅らせることができるかもしれません。
はちや整形外科病院には2名(非常勤を含む)の股関節担当の医師がおります。股関節に痛みや違和感を感じたら、ご相談ください。