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膝の痛みはなぜ起こる?原因となる疾患と対処法を解説

人工関節 膝の痛みはなぜ起こる?原因となる疾患と対処法を解説

「立ち上がるときに膝が痛い…」と悩んでいませんか?


長く続く膝の痛みには原因となる疾患が隠れており、放置したまま生活を続けていると、徐々に痛みが悪化するケースがあります。進行すると、歩行や日常生活に大きな支障をきたしてしまうかもしれません。

そこで今回は、膝の痛みの原因となる7つの疾患と検査方法、痛みが生じた場合の対処方法について解説します。

痛みへの対処法は具体例も交えてご紹介していますので、膝の痛みを軽減させて健康的に過ごしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

膝の痛みはなぜ起こるのか?原因となる代表的な7つの疾患

膝関節の痛みは、軟骨の減少や膝を形成する骨の変形、滑液(関節をスムーズに動かすための潤滑液)の貯留などによって生じます。

高齢化にともない、加齢による変形で生じるケースが増えている一方で、自己免疫疾患やスポーツでの膝の酷使によって、若い人でも引き起こされる場合があります。

痛みが徐々に悪化するケースも多いため、痛みが気になり始めた早期のタイミングで治療を開始するのがおすすめです。

以下で、膝関節の痛みの原因となる代表的な疾患を7つご紹介します。

  • 変形性膝関節症
  • 慢性関節リウマチ
  • 半月板損傷
  • ベーカー嚢胞(嚢腫)
  • 鵞足炎
  • 腸脛靭帯炎(ランナー膝)
  • 膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)

どれも膝関節痛の原因となる疾患で、発生原因はさまざまです。それぞれ確認してみましょう。

1.変形性膝関節症

変形性膝関節症は、軟骨の減少や膝関節を構成する骨の変形などが起こる疾患です。

有病率は男性が42.6%、女性が62.4%と、女性に多くみられる傾向があります。起こりやすい年齢は40歳以上で、肥満や膝関節のケガの有無、膝に負担のかかる仕事をしているかなどがリスク要因です。

膝関節の変形にともない、滑膜炎や骨髄病変が確認されるケースが見られるなど、膝の痛みとの関連性が指摘されています。

また、高血圧や脂質異常、認知症などの全身性疾患との関連性も見られることから、合併症が増すほど健康寿命や生活の質などに悪影響を及ぼすと考えられています。該当する方は、合併症の改善と合わせて痛みの改善に努めましょう。

2.慢性関節リウマチ

慢性関節リウマチは、手や指、足の関節に腫れやこわばりが生じる疾患です。

男女比はおおよそ1:3と女性に多くみられる傾向があり、日本人の有病率は0.2〜1.0%と言われています。

起こりやすい年齢は40〜50歳で、手や足の指のような小さい関節だけでなく、肩や肘、膝関節などの大きい関節に変形が生じる点が特徴です。

血液検査で血清や炎症値を確認し、症状が6週間以上続いている場合は、慢性関節リウマチと診断されます。(ACR/EULAR分類基準の場合)

手や指、足の関節に違和感を感じる方は早めに整形外科へ相談しましょう。

3.半月板損傷

半月板損傷は、過剰に膝関節へ負担がかかることで、半月板が損傷する疾患です。特に、バスケットボールやサッカーなどの接触が多いスポーツで多くみられます。

前十字靭帯(ACL)損傷などと合併しやすく、膝関節に付着している靭帯の機能不全によって、半月板への負荷が過剰になり、損傷するケースもあります。

4.ベーカー嚢胞(嚢腫)

ベーカー嚢胞(のうほう)は、膝裏(膝窩部)に滑液が貯留し、膝関節の可働に制限がかかったり、膝を伸ばした際に痛みがともなったりする疾患です。

起こりやすい年齢は55歳〜70歳の高年齢から高齢者世代ですが、まれに小児期でも見られます。先述した関節リウマチや変形性関節症、膝関節の過用などが原因で生じると言われています。

ベーカー嚢胞が血管を圧迫し、血栓性の静脈炎を引き起こす場合もあるため、合併症に注意が必要な疾患です。

5.鵞足炎

鵞足炎(がそくえん)とは、「鵞足(膝の内側にある組織)」を構成する縫工筋と半膜様筋、薄筋の腱に炎症が生じる疾患です。

変形性膝関節症の合併症としても見られることが多く、スポーツや運動での酷使や準備運動不足で炎症を起こして、痛みが生じます。

鵞足を構成する筋肉は脛骨の周囲(すねのあたり)に付着するため、膝の内側に痛みを生じる点が特徴です。

6.腸脛靭帯炎(ランナー膝)

腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)は、膝の屈伸動作が多いスポーツ、特に長距離ランナーに多く見られる疾患です。膝の外側にある大腿骨外顆と、腸脛靭帯に繰り返し摩擦がかかることで、痛みが生じます。

消炎鎮痛剤の内服や外用薬で治療を進める方法が一般的ですが、効果によってステロイドの局所注射なども行う場合があります。

7.膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)

膝蓋靭帯炎(しつがいじんたいえん)は、膝蓋骨(膝のお皿)に付着する膝蓋腱や大腿四頭筋腱の炎症で痛みが生じる疾患です。

スポーツなどで膝を酷使した結果発症することが多く、運動の負荷量調整や休息などで対応します。腸脛靭帯炎と同様に、消炎鎮痛剤の内服や外用薬で治療を進めますが、効果によってステロイドの局所注射なども検討します。

膝の痛みの原因を特定する検査方法

膝の痛みの原因を特定する検査方法として、単純X線撮影検査や超音波検査、MRIなどの画像診断があります。それぞれの検査方法の特徴は以下の通りです。

単純X線撮影検査・X線を照射し、骨の状態を撮影できる検査
・空気は黒く、骨は白く映る
・骨棘の有無や関節裂隙の幅、大腿骨と脛骨のアライメント(並びが正しいか)などの確認が可能
・一般的にはレントゲンと呼ばれる
超音波検査・人の耳では検知できない高周波数の音波(超音波)を利用した検査
・超音波プローブを体に当て、骨や筋肉から跳ね返ってくる超音波を画像として映し出す
・軟骨や軟骨下骨、半月板、滑膜などの状態を把握可能
・一般的にはエコー検査と呼ばれる
MRI(磁気共鳴画像法)・強い磁石と電磁波を用いて体内を断面像として映し出す
・検査靭帯や軟骨の損傷、などの状態を把握可能

単純X線撮影検査では、骨棘の有無や関節裂隙の幅、大腿骨と脛骨のアライメントなどを観察でき、膝の痛みの原因を特定する情報として用いられます。MRI・超音波検査は、軟骨や軟骨下骨、半月板、滑膜などの状態を詳細に把握できる点が特徴です。

単純X線撮影検査で膝の骨に損傷が見られない場合でも、MRIや超音波検査で骨や靭帯、筋肉などの組織に損傷が確認でき、痛みの特定につながります。

膝の痛みが生じる原因への対処法

膝の痛みが生じる原因への対処法として、代表的なものは以下の3つです。

  • 保存療法
  • 運動療法
  • 手術療法

食生活の改善による減量や定期的な運動の継続など、自分で痛みを助長しないよう気を配れる対処法もあります。ただし、痛みの進行度合いによっては、保存療法や運動療法では対処できない場合がありますので、当院で実施できる手術療法も合わせてご確認ください。

保存療法

保存療法は、痛みの改善を目的とした薬物療法や食事療法が該当します。手術を選択する前の段階で、痛みを緩和させる手段として用いられることが多いです。

薬物療法では、アセトアミノフェンやNSAIDs外用薬の処方、ヒアルロン酸関節内注射の実施を推奨しています。これらの薬物は患者様のお体の状態や既往歴などを考慮し、適した薬剤を選択していきます。

薬物療法と合わせて、食事療法による減量も重要な治療方法です。肥満は変形性膝関節症のリスク因子であり、糖尿病を合併すると治療の妨げになります。食事量や食事内容を見直し、物理的な膝への負担を軽減させられれば、痛みの緩和や機能回復、生活の質が改善する可能性があります。

PRP療法

PRP 多血小板血漿(platelet-Rich Plasma) 療法とは、再生医療の一種で血液を採取し、成長因子などの必要な成分のみを濃縮し、患部に注射する治療法です。
適応となる疾患は変形性膝関節症、靱帯損傷、筋挫傷(肉離れ)、骨折等です。PRP療法により痛みの改善、治療期間の短縮が期待されます。

 ※PRP療法は保険適応外の治療法です。当院の費用は60,000円(税別)です。

運動療法

運動療法では、膝関節の痛みの改善や運動機能改善、生活内動作の改善などの効果が期待できます。

有酸素運動と合わせて筋力増強トレーニングを週3回以上、1回につき60分以上の実施が推奨されていて、特に肥満のリスク要因に該当する方に用いられる方法です。

膝の痛みが強い場合は、浮力を利用した水中運動を実施しつつ、ストレッチで関節の柔軟性向上と痛み緩和に努めます。

手術療法

上記の保存療法や運動療法で膝の痛みが改善しない場合、以下の手術が適応となります。

人工膝関節全置換術(TKA)・重度の変形性膝関節症が適応
・大腿骨と脛骨の関節面を金属製のインプラントに置換
・後十字靭帯を温存する方法(CR型)と後十字靭帯を切除してインプラントで支えるPS型がある
人工膝関節単顆置換術(UKA)・変形が内外側に及ぶ方や靭帯の機能不全がある方は適さない
・前十字靭帯を温存し、膝関節の内側または外側の関節面のみを置換

2023年の当院における手術実績は、人工膝関節全置換術が59件、人工膝関節単顆置換術が32件となっています。

手術をすることで症状の改善が見込める可能性もありますので、保存療法や運動療法で痛みの改善が見られない方は、手術療法も検討してみてはいかがでしょうか。

膝の痛みの原因を把握し、適切な治療を行おう

今回、膝の痛みの原因となる疾患として代表的なものを7つ紹介しましたが、ご紹介した疾患以外でも膝の痛みが生じる可能性はあります。すでに病気を患っている方は、痛みを悪化させないよう治療に専念し、膝の痛みを感じていない方は予防に努めるようにしましょう。

食生活の改善による減量や定期的な運動の継続など、自分で痛みを助長しないよう気を配れる対処法もあります。上記で紹介した内容をもとに、生活の見直しを試してみてください。

とはいえ、痛みの進行度合いによっては、紹介した保存療法や運動療法では対処できない場合があります。症状が改善しない場合は、専門医の意見を聞き、手術を選択するのも治療手段の一つ。手術と聞くと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、いち早く痛みを軽減したい場合にはおすすめの手法です。

はちや整形外科には人工膝関節置換術に対応可能な医師が1名(非常勤含む)所属しており、膝関節の手術総数は91件(TKA59件、UKA32件 23年1-12月)の手術実績があります。

手術をすることで症状の改善が見込める可能性もありますので、症状が気になる方はぜひ受診してみてください。

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