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その他 薬剤師が語るおくすりのお話 – ドーピングについて - 

スポーツファーマシストの資格を持つ当院薬剤師が語る、ドーピングについてのお話です。

みなさんこんにちは、はちや整形外科病院薬剤課所属の村上です。はちや整形外科病院のアンサング(「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」参照)として病院の薬剤を管理しております。

今日はそんな中でもスポーツとドーピングに関してお話してみようかと思います。

では行きましょう、第1問

Q1:ドーピングをすると運動能力が上がる。

どうでしょうか?正解は〇ですね、皆さんもわかりましたよね。では次の問題です、超難問!

Q2:運動能力はどれぐらいあがるのでしょうか?

どうでしょうか?こう質問するとたいていの人は答えに困ると思います。実際にはほんの僅かしか上がらないと思います。100mを20秒で走り抜けるM君だったら19秒になるかもしれません。でもM君が1カ月一生懸命練習したら、1秒タイムを上げることはできるかもしれません。一方、100mを10秒で走る人が9秒で走れるようになることはないですね。9秒95ぐらいにはひょっとしたらなれるかもしれません。垂直飛びで122cmジャンプするD君(垂直飛びギネス記録。元NBAプレーヤのすごい人)がドーピングをしたとしても125cmジャンプできるようにはならないですね。そもそも過酷なトレーニングを積んでいる一流アスリートがドーピングをしたとしても大きな結果は出ないと思います。じゃあなんでそんなんすんねんってお思いでしょうが、答えは簡単です。その0.01秒や1cmで順位が変わるかもしれないからです。場合によってはメダルの色が変わるかもしれません。オリンピックなんて0.01秒や1cmの違いで勝敗が決まるレベルの大会です。ドーピングで得られたわずかな運動能力の違いで早く走り、ボールを遠くに飛ばし、難しいジャンプをこなすことができるかもしれません。そのような人選手を見て、面白い!おらワクワクするぞ!とは僕はならないですね。皆さんはどうでしょう。やっぱりスポーツって正々堂々スポーツマンシップにのっとり真剣勝負するから見てて面白いし、ワクワクするから「いやぁ、スポーツって本当にいいものですね」ってなるんだと思います。

では気を取り直して次の問題です。

Q3:ドーピングに使う薬は裏ルートから入手する。

どうでしょうか?裏ルートってなんやねん!ってツッコミが入りそうですがほんとそれですね。Q2でお話したような薬は筋肉増強の薬で正確には蛋白同化薬と言います。病院で治療として使用されることもありますが、あまり薬局で売っていることはないです。ただ、ドーピングで禁止される薬剤には非常に多くの種類があります。そのため普通に病院で使っていたり、薬局で買うことができたりする薬が結果として能力向上の薬(ドーピング)となりうる事があります。え!! そんな怖い薬が薬局で売ってるの怖いわ~! ってなるかもしれませんが大半の物は怖い薬でもなんでもないです。

例えばドーピングの世界で非常に多く検出されるものとして興奮薬という分類の薬があります。別に飲んだら興奮する訳でもなんでもないですが、医療の世界において交感神経を優位にするということです。パッと見の雰囲気でなんか高級栄養剤っぽい感じがしますが、咳が酷い風邪の時などに普通に使用します。皆さんが運動しているときのことを思い出してみてください。心臓がバクバクいう(心臓の拍動を上げて血液を流す)、息切れしてハアハアと呼吸する(気管支を広げて沢山の酸素を吸い込む)・・。咳が酷い時にはこの気管支を広げる作用を利用して咳を抑えてくれます。CMもたくさんやってますし、一流アスリートがCMキャラクターの薬もあります。ただCMキャラクターであっても試合前には絶対飲まないです。常備薬にして普段は使用してるのかもしれません・・・。筋肉増強ではないですが興奮薬も立派なドーピングです。咳が酷い時であれば呼吸が楽になって良かった良かったですが、風邪をひいてない人が使ったらどうでしょうか。より多くの空気を吸い込めますね。マラソンの例えが分かりやすく沢山の空気(酸素)を吸って走れるから有利です。ドーピングと一言で言っても内容が全然変わってきましたがスポーツマンシップに則った真剣勝負では禁止されることには変わりないですね。

さて、話が長くなってきてしまったので次が今回の最終問題とします。

Q4:ドーピングは運動能力があがるだけでいいことづくしだ。

どうでしょうか。執筆者も記事が長くなってきたのでやや投げやりのQとなってきました。答えは簡単ですね。多くの場合は健康を害します。Q2であったような筋肉増強の薬は副作用がその後ずっと続くと考えたほうが良いです。競技生活が終了した後でもずっと苦しむ場合もあります。Q3で出てきた興奮薬はどうでしょうか。気管支を広げる作用は一時的なものです。なので風邪の人が飲んだとしても数日もしないうちに何の作用もなくなります。じゃあなんの害もないねって訳にはいかず、先ほども書きましたが心臓にも作用します。そんな状態で激しい運動をしたらあまりよくなさそうですよね。また、使い方によっては正常な判断力を失わせたり攻撃的になったりすることが考えられます。風邪薬は用法用量を守って服用し、飲んだ日は無理せずゆっくり休むのが良いですね。

つらつらと書かせていただきましたがいかがでしたでしょうか?一部執筆者の方言であったり何かを思い出すフレーズが入ってしまいましたことをお詫び申し上げます。ドーピングなんてニュースぐらいでしか聞いたことないって方も多いと思います。そんな皆さんの認識が少しでも深まっていただけていたら幸いです。やっぱりスポーツは正々堂々と真剣勝負するのが見ててもやっても面白いですね。

薬は正しく使用することで初めて効果を発揮します。薬の正しい使い方やスポーツをしている方の薬との付き合い方など気になることがあれば家の近所の薬局でもかかりつけ薬局でもどこでもいいので薬剤師にぜひご相談ください。

はちや整形外科病院薬剤課
スポーツファーマシスト 村上

~スポーツ基本法 前文の一部~

スポーツは、次代を担う青少年の体力を向上させるとともに、他者を尊重しこれと協同する精神、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心を培い、実践的な思考力や判断力を育む等人格の形成に大きな影響を及ぼすものである。

また、スポーツは、人と人との交流及び地域と地域との交流を促進し、地域の一体感や活力を醸成するものであり、人間関係の希薄化等の問題を抱える地域社会の再生に寄与するものである。さらに、スポーツは、心身の健康の保持増進にも重要な役割を果たすものであり、健康で活力に満ちた長寿社会の実現に不可欠である。
 スポーツ選手の不断の努力は、人間の可能性の極限を追求する有意義な営みであり、こうした努力に基づく国際競技大会における日本人選手の活躍は、国民に誇りと喜び、夢と感動を与え、国民のスポーツへの関心を高めるものである。これらを通じて、スポーツは、我が国社会に活力を生み出し、国民経済の発展に広く寄与するものである。また、スポーツの国際的な交流や貢献が、国際相互理解を促進し、国際平和に大きく貢献するなど、スポーツは、我が国の国際的地位の向上にも極めて重要な役割を果たすものである。

スポーツ基本法(平成23年法律第78号)

※公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)ホームページ:https://www.playtruejapan.org/

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